「溶射加工」という場合、皮膜形成作業(コーティング工程)のみをが考えられることが多いです。しかし、溶射加工の本来の目的は、依頼主様(クライアント、顧客)のご要望にそって、必要な期間、製品の表面に有用な価値を提供することです。したがって、単に皮膜形成作業だけでなく、それ以外の工程についても充分な計画が必要です。
清浄化は素材と溶射皮膜の結合を促進し、金属溶射の場合には局所溶接効果(マイクロウェルディング)を得るために必要な工程です。清浄化には、中和処理、油脂類の除去、表面酸化物、溶射再生品の場合皮膜除去の4種類あります。
粗面化処理は、溶射皮膜と素材への密着間の結合においてアンカー効果を実現する工程です。ブラスト処理により、素材の表面積の拡大とアンカー効果のための粗面を作り、表面を活性化して局所溶接効果を生み出します。
皮膜を形成する際、注意しなければならない点として、溶射距離、溶射角度、移行速度の3つがあります。これらの点に注意しなければ、正常な皮膜は形成できません。
目的の溶射材料を素材に直接溶射するのではなく、別の材料を薄く溶射した上に、目的とする溶射皮膜をつけることがあります。この皮膜を下地溶射皮膜(ボンディングコート)と呼ばれます(表面側の溶射層はトップコートと呼ばれます)。この下地溶射を行った後、目的の材料を溶射します。
下地溶射の目的は、以下の3点にまとめることができます。
溶射皮膜はその用途に応じた機能が求められますが、溶射のみでは機能を果たさない場合、後処理を実施します。後処理には熱処理、封孔処理、仕上げ加工などがあります。
溶射加工工程の一部としては必ずしも一般的なものではありませんが、溶射皮膜の強度、密着性、密度、耐食性、硬さなどの改善を目的として実施します。
溶射皮膜はラメラにより構成されており、かつラメラ間やラメラ内部に多数のき裂を有しています。このため、溶射皮膜には皮膜表面から素材までつながった気孔(貫通気孔という)が多数存在します。このような貫通気孔の存在は、防食溶射など用途によっては大きな欠陥となります。このような点に対応するため、これら溶射膜中に存在する気孔を樹脂などで埋める処理が、封孔処理です。
溶射したままの皮膜表面は粗く、またうねりを持っており、皮膜に対して正確な寸法精度や必要な表面粗さ・平滑性を求められる場合は、仕上げ加工を行う必要があります。仕上げ加工の種類には、切削、研磨、研削、ラッピングなどの種類があります。
施工後または機械加工後に、求められている要求事項に合格しているか、検査員が検査します。